大判例

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名古屋高等裁判所 昭和24年(ツ)8号 判決

上告人 河野泰三

被上告人 石川修次

一、主  文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

二、理  由

本件上告理由は末尾記載の通りであつて、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

上告理由第一、二点について、

本件第一審並に第二審における昭和二十二年三月十三日の弁論再開申請前の訴訟記録が昭和二十年二月の空襲によつて燒失したことは、原審における証人鈴木貢の証言によつて明らかである。したがつて口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書によつてはこれを証するを得ないが、民事訴訟法第百四十七條但書によれば調書の滅失した場合は、他の方法でこれを証明することができることになつているので、この点を考えて見るに本記録には第一審判決原本に基ずいて作られた判決正本が編綴されていて、これと前記鈴木証人の証言を考え合わせると第一審の訴訟手続が適法に行われたことが推認し得られるから、上告論旨はその理由がない。

上告理由第三点について、

この点についても調書が全部滅失しているので専ら前記鈴木証人の証言によつてこれを明らかにしなければならぬが、同証人のいうところを見るに、第二審の判決を言渡したといつても、それは判決原本に基いてなされたものでなく、また第二審の審理判決に関與した判事三名の全部の氏名さえ明らかでなく、したがつてその判決原本はついに作成せられずに終つているというのであるから到底適法な判決の言渡があつたとは考えられない。從つて原審が弁論を再開してさらに判決をしたのは相当であつて何等違法はない。

よつて本件上告はこれを棄却すべきものと認め、民事訴訟法第四百一條第八十九條第九十五條を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 中島奨 茶谷勇吉 白木伸)

(上告理由書)

上告理由第一点

一、名古屋高等裁判所(旧名古屋控訴院)構内ニ建設セラレ在リシ旧調停会館ガ昭和二十年二月二十三日ノ空襲ニヨリ全燒シタル事実ハ顕著ナル事実ナリトス

原審証人鈴木貢証言ノ如ク本件第一審訴訟記録名古屋区裁判所昭和十五年(ハ)第四〇二号家屋明渡請求訴訟事件ノ第一審記録全部並ニ之レニ対スル控訴申立ニ基ク第二審訴訟事件記録即チ昭和十八年(レ)第三四号事件訴訟記録(裁判長判事鈴木貢担当中ノモノ)一切ガ右空襲ノ際全燒シタルモノトス

二、証人鈴木貢証言ノ如ク前示第二審ニ属セシ訴訟ハ弁論ヲ終結シ昭和十九年十一月カ或ハ同年十二月中ニ第二審(控訴審)ノ判決言渡ヲ爲シ其判決原本作成中、其全部ガ燒失シタルモノニテ爾來、其儘放任シ在リタルガ昭和二十二年三月十三日ニ致リ被上告人(被控訴人)側ヨリ弁論再開ノ申請ヲ爲シ同日以後再ビ名古屋地方裁判所ニ於テ審理セラルルニ致リシコトモ其爾後ノ記録ニヨリ明白ナリトス

三、今更茲ニ説明スル迄モナク、民事訴訟手続ガ第一審訴状提出後如何ナル手続ニヨリ口頭弁論ガ行ワレ且ツ夫レニ基キ第一審判決ノ言渡シガ行ワレシヤハ総テ口頭弁論調書ニヨツテノミ判断スルノ外途ナキコトハ明白ナル次第ナリトス

然ルニ今回ノ判決即チ昭和二十四年十月二十二日言渡シニカヽル判決(裁判長裁判官山口正夫以下二裁判官担当)ハ以上第一審訴訟手続ガ如何ナル方式ニヨツテ又如何ナル内容ニ於テ適式ニ行ワレタルヤ否ヤヲ何等ノ調査ナク独断ヲ以テ之レガ適式ニ手続ガ履践セラレ居ルモノト速断シ上告人ノ控訴ヲ棄却スル旨判決セラレタリ

カヽル場合、上告人ノ見解トシテハ本件ノ如ク全記録燒失シタルモノナレバ先ヅ事件ヲ第一審裁判所ニ差戻シ適式ノ訴訟手続ヲ以テ始メヨリ訴訟手続ヲ履践セシムベク命ゼラルベキモノナリト信ズルモノニシテ結局スルニ今回ノ判決即チ昭和二十四年十月二十二日言渡シニカヽル判決ハ法令ニ違背シタルモノト言ウヲ得ベシ

上告理由第二点

一、今回ノ判決即チ昭和二十四年十月二十二日言渡シノ判決書ヲ見ルニ「当事者双方の事実上の陳述はすべて原判決事実摘示のとおりであるからそれをこゝに引用する」トアルモ前來説明ノ如ク第一審判決書ハ燒失シテ存在セザルモノナレバ之レヲ引用スル由モナシ、結局此ノ判決ハ法律ニ云ウ処ノ判決ニ理由ヲ附セズ又ハ理由ニ齟齬アルトキトアルニ該当スルモノト云ウヲ得ベシ

上告理由第三点

一、第一審訴訟記録ガ全然存在セザル本件ニ於テ第二審裁判所ガ差戻シノ挙ニ出ヅルノ必要ナキモノナリト仮定スルモ(即チ口頭弁論調書ガ存在セザルトモ第一審訴訟手続ガ適式ニ履践セラレタルモノナリト仮定スルモ)ワガ民事訴訟手続上同一事件ニ於テ且ツ同一審級ニ於テ一旦判決言渡シアリシモノヲ後日ニ至リ再ビ判決言渡シヲ爲スト云ウガ如キコトハ法律上絶対ニ之レヲ許サヾルモノナリト信ズ

原審証人鈴木貢証言ノ如ク此ノ事件ハ昭和十九年十一月又ハ同年十二月中ニ判決言渡ヲ爲シ其ノ判決原本ノ完成セザル内ニ全記録ガ燒失シタルコトハ事実ナルニ拘ラズ同判決ノ存在ヲ否定シ今又茲ニ昭和二十四年十月二十二日ニ二重ノ判決言渡シヲ爲スガ如キコトハ誠ニ法令ニ違背シタルモノト云ウヲ得ベシ

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